日刊競馬コラム
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日刊競馬で振り返る名馬
オグリキャップ
1993年・第38回有馬記念

【プロローグ】皇帝の子は帝王

 
 レース柱(824KB)


 シンボリルドルフとトウカイナチュラルの間に誕生した牡馬の名はトウカイテイオー。皇帝ルドルフの子にして名は帝王。走らなければとんだ「名前負け」だったが、そのように命名されるだけの素質を示していたのだろう。

【第1章】父に続け!
   スター街道まっしぐら

 それだけの期待を受けていながら12月の中京でひっそりとデビューしたトウカイテイオーは、その後もシクラメンS→若駒Sと地味にオープン特別を連勝。36レースすべてを全国発売している今とは違い、当時は重賞ですら全国発売ではないレースが多く、西のオープン特別を連勝している3歳馬など関東の人間はよく知らないのだった。当時の私は業者ではなかったので知らなかっただけなのかと思って確認してみたが、すでに業者だった諸先輩も「若葉Sで見るまではよく知らなかった」とのことだった。

 皐月賞のトライアルとして選んだのも指定オープン=若葉S。ここで我々は、今までに見たことがないものを目撃することになった。それはド楽勝のレース内容ではなく、パドックでの歩き方。お尻が「ピョコン」と上がる独特の歩き方は、異常なまでに柔らかい繋ぎが産み出したものだった。

 皐月賞もダービーも単枠指定の大外枠だったがまったく問題なし。大外を回っての楽勝。不利を受けるリスクがないぶん、かえって良かったほどだった。

 無敗のままダービーを制し、二冠を達成。父シンボリルドルフの岡部騎手がそうしたように、安田隆行騎手は高々とVサイン(=二冠達成)を掲げた。さあ、次は父に続く無敗の三冠達成。誰もがそれを期待し、信じていたが、無念の骨折。「三本目の指」は立たなかった。

【第2章】山あり谷あり

 復帰は翌年春の大阪杯。鞍上には父の主戦だった岡部騎手がいた。テレビアナウンサーの「他の馬はどうでも良い」という名(迷)実況の通りの大を楽勝。そして迎えたのがメジロマックイーンとの一騎打ちムードとなった天皇賞・春(トウカイテイオーの単勝も2頭の馬連も1.5倍)。結果は5着。先輩の古傷を晒すようで恐縮だが、この時の日刊競馬の本紙予想は◎メジロマックイーン○トウカイテイオーの1点予想。以後、本紙1点予想は出現していない。ただ、身内なりにフォローすると、このレースで「◎トウカイテイオー」ではなく「◎メジロマックイーン」だったのはさすがだと思う。「2頭の一騎打ち」というレースにおいて、「勝つのはメジロマックイーン」と予想しているわけだから「当たり」である。競馬の2着や3着には偶然の要素も多々ある。だから3連単は難しい。

 さて、トウカイテイオーはまたもや骨折。復帰は秋の天皇賞だったが、骨折明けのぶっつけにも関わらず1番人気。しかし、ダイタクヘリオス、メジロパーマーの先行争い(1000m通過57秒5)に付き合ってしまい、失速して7着。直線で二転三転四転の追い込み競馬を演出してしまった。

 これでなぜか評価が下がってしまい、次のジャパンCは5番人気。しかし、これを快勝して「父子2代ジャパンC勝ち」という偉業を達成。続く有馬記念(岡部騎手が1週前にカノープスで降着→騎乗停止となったため田原騎手)では当然のように1番人気に復帰したが、今度は11着に惨敗。デビュー時と同じ460キロ(ジャパンCは470キロ)まで体重が減っていた。いったい何事かと思われたが、後になって「虫下しをかけたらゾロゾロと(虫が)出てきた」という「敗戦の弁」が出てきた。

【第3章】ハッピーエンド

 3度目の骨折を克服して、復帰戦は1年後の第38回有馬記念。岡部騎手は1番人気ビワハヤヒデに騎乗するため、前年に続いて田原騎手。1年ぶりの出走につき生涯3度目の1番人気以外(4番人気)だったが、4コーナーで先頭に並んでいった時には「これはもうトウカイテイオーだろう」という抜群の手ごたえ。手ごたえ通りに直線も伸びて、しぶとく食い下がるビワハヤヒデに競り勝つ。馬上で田原成貴が泣いた。

【エピローグ】実は「穴馬」だった?

 結局、生涯12戦で1番人気でなかった3戦はすべて1着。負けた3戦はすべて単勝2.5倍以下の断然人気でのものだった。無敗で二冠を取るまでのスーパースター然とした姿からは想像もつかない「穴馬」っぷりだったが、これは産駒にも引き継がれる。

 トウカイテイオー産駒のJRA重賞勝ちは6だが、人気は4、8、7、11、9、6番人気。11番人気1着がトウカイポイントのマイルCS勝ちだった。逆に1~3番人気では[0.5.6.10]という裏切りっぷりである。

トウカイテイオー 1988.4.20生 牡・鹿毛

競走成績:12戦9勝
主な勝ち鞍:皐月賞
日本ダービー、ジャパンカップ
有馬記念
シンボリルドルフ
1981 鹿毛
パーソロン
スイートルナ
トウカイナチュラル
1982 鹿毛
ナイスダンサー
トウカイミドリ