日刊競馬コラム
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日刊競馬で振り返る名馬
タイキシャトル
1997年・第31回スプリンターズステークス

◎衝撃のデビュー勝ち◎

 
 レース柱(1.30MB)


 タイキシャトルのデビュー戦は3歳(当時の表記では4歳)4月。

 単勝1番人気に推されていたが、東京ダート千六の未勝利戦には、もう勝ち上がり寸前という馬が何頭かいて、初出走馬には決して楽な相手ではないと思われた。

 タイキシャトルには大変申し訳ないが、私の想像上の、レース後のインタビューに登場してもらおう。

──道中、好位でかなり行きたがっているように見えましたが
「スタートして少しの間は普通に走っていたんですが、岡部さんが『もっとゆっくり走れ』と。それで、ゆっくり走ったんですが、それでもまわりより速かったらしくて。さらにゆっくり走ろうとしたら、これがなかなか難しくて」

──4コーナーでは先頭に並んでいましたね。
「なんとかゆっくり走れたと思ったんですが、いつのまにか先頭に並んでしまって…。直線もしばらく先頭に出るのを許してくれなかったんですが、まわりの馬はバテちゃうし、どうしようかなと思っていたら、直線半ばでついにゴーサインが出て。でもほんの少しの間だったなあ」

──2着に4馬身差。圧勝でしたね。
「でも、ほとんどゆっくり走っていただけなんですよ」

──今の時点で実はあと何秒も時計を詰められるのでは?
「それは、速く走ってみないことにはわかりません」

──そ、そうですか。おそれいりました──

◎ひょっとして…◎

 その後の活躍は皆さんご存知のとおり。

 海外GI勝ちまでやってのけた。

 フランスに遠征した時に、ひと声いなないてから、悠然とパドックに入っていくタイキシャトルの映像をご覧になった方も多いことだろう。

 種牡馬としても、初年度産駒からGI馬が出るなど活躍馬多数。やっぱり成功してみせた。

 栗毛の馬体でシッポを水平になびかせて、ゆっくり走っているようなのにスイスイ先行している馬がいたら、きっとタイキシャトルの子供だ。

 さて、タイキシャトルには重ねがさね大変申し訳ないが、私の想像上の、引退後のインタビューに登場して下さい。

──あのお、まったくあり得ないことだとはわかっているのですが、ひとつお聞きしてよろしいでしょうか。
「はい。何でしょう」

──実は、京王杯スプリングCや海外遠征後のマイルチャンピオンシップ、他にも何度かあったような気はしますが、そのレース中に思ったことなんですが…
「はい」

──4コーナーで、居眠りしてません?
「するわけないでしょう。怒りますよ」

──でも、4コーナーから直線にかけて、他の馬は必死なのに、あなたは歩いているようにさえ見えるんです。『まずいなあ、ちょっとウトウトしてたら先頭に出ちゃったよ。岡部さん怒ってるかなあ』なんて。
「……………」

 ヒヒン、といなないてから悠然とパドックを回って、鼻歌まじりにスタートして、レース中に居眠りしているうちに先頭に立っちゃって。

 こんなことも、タイキシャトルならひょっとして、あり得るんじゃないかなあ。

タイキシャトル 1994.3.23生 牡・栗毛

競走成績:13戦11勝
主な勝ち鞍:マイルCS
スプリンターズS、安田記念
ジャック・ル・マロワ賞(仏)
Devil's Bag
1981 鹿毛
Halo
Ballade
Welsh Muffin
1987 鹿毛
Caerleon
Muffitys