日刊競馬コラム
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日刊競馬で振り返るGI
ヤマニンゼファー
(1993年安田記念)


レース柱(807KB)


 強すぎる馬が圧勝すると、勝ちに行った他の人気馬が失速してしまい、勝ちに行かなかった人気薄が2着に来ることはよくある。今年の皐月賞がそうだった。スペシャルウィークもよく(馬連の)万馬券を出した。歴史的名馬は「順当に」勝ちながらも馬券を「波乱」に導く。

 ヤマニンゼファーは安田記念を連覇しているが、2回とも馬連は万馬券だった。

 1勝目(1992年)は自身が11番人気。それもそのはず、それまでに芝(経験2回)で勝ったことがない馬だった。しかし、人気がなかっただけで内容は横綱相撲。好位から早めに先頭に立ち、4コーナー11~13番手の馬が2~5着に来るような激しい流れを押し切った。2着カミノクレッセは直前に天皇賞(春)2着。なおかつ1600mでは未勝利だった馬で、直前にGIで2着していながら「距離不足」を懸念されて5番人気に過ぎなかった。しかし、ヤマニンゼファーが厳しい競馬に持ち込んだため、1600mでは短く春の天皇賞で走れるような馬のスタミナが生きた。

 1番人気ダイタクヘリオスは先行して6着。前年の安田記念2着、マイルCS1着。そしてこの年もマイルCSは勝つ名マイラーがヤマニンゼファーに沈められた。

 翌1993年は2番人気での勝利だったが、その内容は“横綱相撲”どころではなかった。2番手から早めに先頭に立ち、挑んでくるライバルたちをバッタバッタとなぎ倒してゴールに向かう様子は、まるで時代劇の殺陣シーン。「勝負」を挑んだ馬たちは軒並み沈められてしまった。 2着は4コーナー13番手にいたイクノディクタス。前年に続き、先行して勝ちながら2着に追い込み馬を連れてきた。

 イクノディクタスはそれまで1600m未勝利だった馬で、直前に天皇賞(春)に出走していた馬。前年のカミノクレッセと似たパターンだが、カミノクレッセと違って天皇賞で凡走(9着)していたため、さらに人気がなく14番人気。馬連は68970円という、特大の万馬券となった。

 この時の1番人気は前年の桜花賞馬ニシノフラワー。桜花賞以外にも阪神3歳牝馬S1着、チューリップ賞2着(騎乗ミス)、マイラーズC1着と、1600mの重賞では抜群の成績を誇っていたが、10着に沈んだ。前年のダイタクヘリオスと同じで、「マイル実績」がある馬は、ヤマニンゼファーが作り出す激しい流れの東京1600mでは凡走してしまうのだった。

 ヤマニンゼファーはこの年、秋の天皇賞も勝つ。1000m通過58秒6というツインターボの逃げを楽に交わして先頭。中団から脚を伸ばしてきたセキテイリュウオーとビッシリ叩き合いハナ差の勝利だったが、どこまで行っても差されはしないだろうという貫禄の勝利だった。

 この時も人気はなかった(5番人気)が、東京1600mのGⅠを正攻法で勝つ馬が「2000mは長い」ということはない。これを裏返すと、中距離でも走れる馬でなければ東京1600mのGIを勝てない。今年のNHKマイルCのような信じがたいスローになれば必ずしも当てはまらないが、それは3歳限定戦でのこと。古馬の安田記念では「1600mが上限」という馬が勝つ確率は非常に低い。

 今年は香港から最強スプリンター・サイレントウィットネスが参戦。前走、初の1600mでデビューからの連勝記録がストップしたが、こういう馬(スプリンター)に勝たれると“東京1600m”の沽券に関わる。迎え撃つ日本馬には頑張って欲しい。

ヤマニンゼファー 1988.5.27生 牡・鹿毛

競走成績:20戦8勝
主な勝ち鞍: 安田記念、天皇賞(秋)
ニホンピロウイナー
1980 黒鹿毛
スティールハート
ニホンピロエバート
ヤマニンポリシー
1981 栗毛
Blushing Groom
ヤマホウユウ