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エリザベス女王杯・ゴール前 題字
GI復刻版 1998年11月15日
第23回エリザベス女王杯
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馬柱  前回の桜花賞に続いて2度目となる原稿依頼。エリザベス女王杯には何度も撮影で出張してはいるし、ヒシアマゾン、ファインモーション、そしてアドマイヤグルーヴと彼女らの強さも印象に強く残っているが、忘れてならないのはメジロドーベルの存在。実はこの馬には特に思い入れが強い。
 現在も競馬ファンの間ではペーパーオーナーゲームが盛んだが、私を含め最初5人でスタートしたのが、ドーベルデビューの年。私達のゲームのルールは期間は翌年の菊花賞まで。そして必ず父内国産種牡馬の産駒から選ぶことと重賞以外は勝たないとポイントとならないというしくみ。当然サンデーサイレンスの産駒なんかはなから対象外。それぞれが現役時代の父や母親に愛着がある馬を持つことから始まった気がする。そんな中で私が選んだ一頭がドーベルだったというわけ。選んだ理由は今となっては定かでないが、もともとメジロの冠名の馬が好きだったし、父メジロライアンはクラシックはあと一歩だったが、堅実だった点、母メジロビューティーもそこそこ走ったことが決め手になった気がする。
 私の場合は一年目からたまたま成功したが、基本的に勝たなければいけないというのは意外と難しい。現在までにメジロドーベル、ザッツザプレンティと2頭のクラシックホースが出たが、期間内に3勝すれば上出来というのが現実。ドーベルは夏の新潟でデビュー勝ち。2戦目5着のあと3連勝で暮れの阪神3歳牝馬S(現在の阪神ジュベナイルフィリーズ)を勝ってクラシック候補に。年明けのチューリップ賞は気性の難しさを見せて惜敗。桜花賞も不良馬場、18頭立ての16番枠ということも重なり何とか2着確保と春前半は不本意内容に終わった。そして迎えたオークスは後方から圧倒的な末脚で雪辱をはたし、自身2つ目のビッグタイトルの栄冠。夏を越して古馬相手のオールカマーを逃げ切りという意外なレース内容で快勝。秋華賞でもキョウエイマーチを並ぶ間もなく交わし、トップの地位を確立した。暮れの有馬記念は牡馬相手の2500メートル、かかるような面を見せて惨敗した。牝馬相手にはすべて3着以内も、牡馬相手には苦戦というパターンが生涯続いた点は不満だが、逆に牝馬同士なら無類の強さを見せてくれたのも事実。
 ところで京都競馬場というと私を含めレースを撮影するカメラマンにとっては難しいコースという印象がある。というのは特に晴れた日は午前中は逆光、そして午後になると斜め後ろから光りが当たる半逆光の状態になるということ。今までの経験から一番気を使うのは函館競馬場。ここは天気の日は函館山の方からの太陽の光りでもろに逆光になりいまでも撮影のポイントが上手くつかめないが、京都はそれに次ぐ難しさがある。具体的に言うと馬のお尻には光りが当たるが、顔の部分は影になってしまい、切れのある写真にならない。かえって明るい曇りの方が光りが全体にまわって納得のいく仕上がりになることもある。
 さらに京都競馬場には内側に池があり、独特の雰囲気を出していることは知られているが、これも撮影を難しくしている要因の一つ。前日との気温差の多い晴れた日などは多分池の水分が蒸発するせいかモヤがかかった状態になることがある。ひどい時には直線半ばまでモヤがかかったりして、モヤの中を抜けてくる馬を撮ることもしばしば。また天気も午前と午後では変わってしまうこともあり、極端な時は周辺は明かるいのに競馬場の上だけには雲が出ていたりする。こういう時はすかっとした写真にならないケースが多い。

エリザベス女王杯・ゴール前  ドーベルが勝った平成10年のエリザベス女王杯がまさにそんな状況だった。この年のドーベルはというと前半は使えるレースも限られていて牡馬相手に8、2、5、5着という成績。善戦はするが勝つまでにはいたらなかった。そして休み明けの府中牝馬Sを58キロを背負って久々の勝利。迎えた第23回エリザベス女王杯。中団待機から進出、インから伸びての差し切り勝ち。過去3回の対戦で常に先着を許していた圧倒的1番人気のエアグルーヴを負かしてのものだけに鞍上の吉田豊騎手もゴールの時に左手の人指し指を天に向かって突き上げたガッツポーズで喜びを全身で現わしていたのが印象的だった。これで4つ目のビッグタイトルとなったが、撮った写真は前述のように何となくスッキリした感じの仕上がりではなかったのは残念だった。
 2度目の挑戦となった暮れの有馬記念はかかる面を見せて直線失速。年明けの中山牝馬Sでは久々に牝馬相手に2着と取りこぼし。だが秋は一叩きして迎えた第24回エリザベス女王杯を貫禄勝ちで連覇達成。翌週に引退、繁殖入りということで競走生活を終えた。
 4年連続してのGI勝ちという快挙は過去にもなかった大記録。一つ上のエアグルーヴと違って牡馬相手には結果を出せなかったが、牝馬同士なら圧倒的な強さで存在感を示した。特に牝馬同士の京都コースでは3戦3勝の負けしらずと輝きを見せてくれた。  あいにく産駒の成績は今一つだが必ず自分に続く活躍馬を出してくれると確信している。
[矢島 勇]

☆第23回エリザベス女王杯 優勝馬☆
メジロドーベル 1994.5.6生 ・鹿毛
メジロライアン
1987 鹿毛
アンバーシャダイ
1977 鹿毛
ノーザンテースト
クリアアンバー
メジロチェイサー
1977 鹿毛
メジロサンマン
シェリル
メジロビューティー
1982 鹿毛
パーソロン
1960 鹿毛
Milesian
Paleo
メジロナガサキ
1971 栗毛
ネヴァービート
メジロボサツ
 
 



馬主………メジロ商事(株)
生産牧場…伊達・メジロ牧場
調教師……美浦・大久保洋吉

通算成績 21戦10勝[10.3.1.7]
主な勝ち鞍 阪神3歳牝馬S(1996年)
優駿牝馬(1997年)
秋華賞(1997年)
エリザベス女王杯(1997,98年)

受賞歴 JRA賞
最優秀3歳牝馬(1996年)
最優秀4歳牝馬(1997年)
最優秀父内国産馬(1997年)
最優秀5歳以上牝馬
       (1998,99年)

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1998年11月15日
第23回エリザベス女王杯(G I) 京都・芝2200m・良
[1]メジロドーベル牝556吉田  豊2.12.8
[8]14ランフォザドリーム牝556河内  洋1.1/4
[3]エアグルーヴ牝656横山 典弘3/4
 上がり 45秒8−33秒8
単勝 460円  複勝 130円 260円 100円
枠番連複 1−8 1470円 馬番連複 1−14 3890円